◇つちやエンジニアリング代表 土屋 武士の挨拶


私たちは小さな町工場で、数人のメカニックとスタッフで運営しているプライベートレーシングチームです。一般車の整備やイベント運営などもしながら、大好きなレースをやるためにみんなでコツコツ、一生懸命働いています。

つちやエンジニアリングは1971年、神奈川県藤沢市で、父、土屋春雄が創業しました。親父は伝説のメカニックとして知られ、自動車メーカーのワークスチームを相手に数々の優勝と、5回の全日本チャンピオンを獲得し、「最強プライベーター」と呼ばれていました。
しかし2008年いっぱいで資金難により活動を休止。その職人の技術と情熱が活躍の場を失ってしまいました。それは同時に次代を担う若い職人が育つ環境が、一つ消滅してしまったということにもなります。

活動休止を傍で見て、改めて置かれた状況を見つめ直し、色々と摸索してきた私は、職人魂こそ伝承すべき「未来をつくる原動力」であるという考えに辿りつき、継承できる環境を作るため「つちやエンジニアリング」を日本のレースシーンに復帰させることを決断し、その為に必死で活動をしてきました。そしてたくさんの素晴らしい出会いがあり、2015年に日本の最高峰のレース「スーパーGT選手権」に7年ぶりに、つちやエンジニアリングとして戻ってくることができたのです。

2代目つちやエンジニアリングも「打倒ワークス」をテーマに再び挑戦し、復帰初年度から優勝を獲得しました。復帰2年目の2016年にはシリーズチャンピオンを獲得し、親子2代に渡っての全日本チャンピオンになり、トップチームとして復活をすることができました。

やる気もある、技術もある。そんな職人集団が何年もの間、活躍の場を奪われていたというこの事実が、今の日本の社会が抱えている問題の一つであると、私は感じています。利益を優先にするために本当に大切なものを失ってしまっているのでは―――。
今の時代、“本質を貫いて生きる”ということは、本当に大変なことなのかもしれません。しかし、本質をないがしろにして未来を創造できるのでしょうか?

私は、本質を貫く職人のプライドが、現代の日本を豊かにしてきたのだと思っています。最先端のデジタル機器を使用して開発しているレースのステージにおいても、アナログな昭和のスタイルで勝負を挑み、小さな町工場でも復帰2年目にチャンピオンを獲得できたこの事実を見ても、職人の「人間力」が、大きな企業の持つ、組織力や資本力にも勝負を挑めるということの証明になったと思います。

私が今「やるべきこと」、それは良き伝統の継承と、次代を担う若い世代が成長できる環境を作ること。そして、それを長く続けることが私の使命だと、そう思っています。
資本力、組織力では大企業ワークスチームに及びもしませんが、私たちにはたくさんのハードルを越えて、壁を越えて前に進んできた「実現力」があります。1㎜でも必ず前に進むという想いで、常に己を磨き続けてきたからこそ、見ることができた景色があります。そしてそんな私たちを支えてくれる仲間がいてくれるからこそ―――、たくさんの感動を共有することができ、力みなぎる未来を創造できるのだと、そう思っています。


このサポーターズクラブは、日本のレースシーンからプライベーターを失くさない為に、残すべき“本質”を守るために生まれました。レースには人を育てる為の要素がすごく詰まっています。また、この活動に触れることで、あなた自身にも熱い想いが漲ってくることでしょう。

大切なことを忘れない為に―――。
私たちと共に戦いましょう。

2019年2月20日
  つちやエンジニアリング 代表 土屋 武士